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知人達の苦戦

昔の事を書く、おやじだ。
暑い季節がきた。
社会人になって、はじめての夏。
いつもの喫茶店に顔を出す。
知人達は苦戦していた。
学校の説明と全然違うと嘆いているヤツ。
営業で入社したハズなのに、来月から工場にまわされるヤツ。
専門学校に入学したものの、あまり行っていないヤツ。
なぜか連絡がなくなったヤツ。
それぞれ悩みを抱えている。
俺には仕事の専門知識がまるでない。
本来なら俺も、知人達と同じように大苦戦するハズだった。
だが、俺には藤間さんがいた。
社内の大まかな人間関係。
わからない専門用語。
初歩的過ぎて、もう一度は聞きにくい事。
全て藤間さんが教えてくれた。
知人達には、藤間さんの事は言わなかった。
なに言われるか、わからないからだ。
この時期も、ひたすら愚痴の聞き役にまわっていた。
出来れば、この「いつもの喫茶店」の空間は、ずっと残したい。
そうだ。
これからは、知人達のフォローにまわろう。
そんな事が考えられるくらい、気持ちに余裕があった。
しかし、それは俺が何も知らなかったからだった。