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稲垣くんの悩み

昔の事を書く、おやじだ。
昼休み。
同期の稲垣くんが沈みがちだ。
俺「どしたの?ちょっと元気なさげだけど…」
最近、調子が悪いらしい。
どーも、高校の頃から付き合っている彼女とのケンカが増えてきたとか。
それともう1つ。
仕事の内容が思っていたものと違うらしい。
いつもの喫茶店の知人の1人も、似たような事を言っていた。
稲垣くんは3階写植室という、文字を打つ仕事をしている。
写植室は大きく2つにわかれている。
和文班と英文班。
稲垣くんは和文班だ。
せっかく学校でデザイン的なものを学んだのに、今やっているのは、ひたすら文字打ち。
文字組には、バランス感覚が要求されるが、デザインというワケでもないらしい。
(藤間さんに聞いた。)
彼は唯一、男の同期だ。
いなくなったらツライ。
自分勝手だが、辞めてほしくない。
俺「でも、がんばろうよ」
そのときの俺には、それぐらいの事しか言えなかった。